恋する寄生虫 感想、レビュー 寄生虫ってもっと身近なものなのかも

三秋縋「恋する寄生虫」感想、レビューです。 ページ数:322

物語の面白さ:A

文章:S

キャラの魅力:A

雰囲気、世界観、設定:S

総評:S

あらすじ

何から何までまともではなくて、

しかし、紛れもなくそれは恋だった

「ねえ、高坂さんは、こんな風に考えたことはない? 自分はこのまま、誰と愛し合うこともなく死んでいくんじゃないか。自分が死んだとき、涙を流してくれる人間は一人もいないんじゃないか」

失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。

しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。彼らは知らずにいた。二人の恋が、<虫>によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎないことを――

感想

はじめは表紙のイラストがなんか好みで調べ始めて、作者さんのツイッターを見て呟いてる事が非常に興味深くて面白かったので、かなり期待度が上がっている状態で読んだのですが、普通に期待を上回りました物語、キャラ、文章、雰囲気全てにおいて素晴らしかったです。

少し暗い、陰を落としたようなキャラと雰囲気ですが、しかし重苦しくはなく、読み易く、難解という訳ではないが、深みがあって考えさせられるものが多いし 、またキャラの心情がストレートに響いてきます。

ツイッターの呟きから少し予感はありましたが、そんな感じのこの人の文章がめちゃめちゃ好きです。

話の内容ですが、「潔癖症」「視線恐怖症」。メインの二人はそれぞれに強迫症状を抱えており、それによって社会に上手く適応する事が出来ずにます。

そんな社会不適合者の2人の普通でない、どこかちぐはぐでおかしな時間を共有しながら確かな繫がりが芽生えていく様子は、そのまんま何事もなく互いに好き合ってハッピーエンドなんて結末にならないだろうなとは分かっていても読んでてほっこりするものがありました。

「社会不適合者」という時点で、致命的な訳ではないにしろ私もそうだという自覚はあるので、はじめから結構キャラに入り込めた気がします。

私自身、学生時代は病気とまでは言わないまでも、私も学校の授業中の雰囲気、音、教師の顔、言動、生徒達の何も見ず考えていないような顔、そしてそんな中にこんな事を考えている自分自身、その何もかもが苦痛で仕方なく、平日に学校をサボってバイトするとか社会から逸脱した時期があるので、なんか他人事に聞こえないですね。(まあ、今も上手く適応してると言えるかというと「?」ではありますけも。)

私もそうでしたし、この二人もそうですけど、自分が異常である事は重々認識していて、なんとかしたいと思ってはいるんですよね。

ただ、作中で主人公も言ってますが、頭では理解してても心がついてくるかどうかは別の話なんですよね。

自分の頭の理解に心がついてこれたなら、何の問題もなく社会に適応している普通で真っ当な人間として振る舞う事だって容易です。

そう思ったり、傾向があるとかなら多くの人に当てはまるでしょうが、多くの人はそれに上手く折り合いをつける事が出来るのでしょうが、それが特に強くて、折り合いをつける事が出来ずに表に出してしまうのがこの二人や昔の私なのでしょう。

それがある程度まで目立ったり、周囲に迷惑をかける域にまでいくと、その人の事を「病人」「異常者」みたいにまるで普通でない人間みたいに扱われる事がありますが、自分で自分の事をよく認識している時点で、私はごく普通の人間だと思います。

単にその傾向が強かった、または、何かのきっかけで強くなってしまった、それだけの事だと思います。それをリハビリをして和らげて社会に適応しようという2人の努力は本当に尊いものだと思います。

話が逸れましたが、本作においては、それらの症状や傾向はタイトルにある通り、生来の性格だからとかではなく、「寄生虫」が大きく関わってくるのですが、「人間に寄生虫が寄生して人間を操る」なんてのは完全なファンタジーにも聞こえますし、流石に明確に操るなんてはっきりした事例がある訳ではありません。

しかし、そんなのファンタジーだと一言で笑い飛ばせないくらいの事は実際現実にもあるらしく、そのあたりが面白くもあり、ちょっと怖くもありました

「寄生虫」の線で話をするなら私の中にも寄生虫がいてそれに操られていた、もしくは今も操られているのかもしれない、という話になるのですが、普通なら「いやいや、ねーからそんなファンタジー。」ってなる所ですが、本作を読んだ後だと「うーん、マジでちょっとそうかもな。」って思えるリアルさがありました。寄生虫って私たちが思っていた以上に身近な存在で、私たちの日常に潜んでいるものなのかもしれないな、って思いましたね。


後、ラスト。あえてその先を書かない、結論を出さない
という締め方。

明確な救いがある終わり方が見たい気持ちは無論ありますが、あえてその先を書かない終わり方というのがもしかしたら一番優しい終わり方なのかなとも思いました。

キャラ

「重度の潔癖症でウイルス作り大好き27歳の失業中の男」、「視線恐怖症で他人と目を合わせる事が出来ない寄生虫好きの17歳不登校の女子高生」

2人とも相当に変わった趣味の持ち主ですが、特に佐薙ちゃんの寄生虫トークは面白かったです。

特に「トキソプラズマ」っていう寄生虫は世界人口の三分の一が感染していて、それは宿主の性格や傾向をコントロールするとかいう話。「本当かよ!?」って思ってるウィキペディアで調べてみると、確かに本当だったりしてびっくりしました。

他にも作中で佐薙ちゃんが色々と寄生虫トークをして、不思議な寄生虫、恐ろしい寄生虫など、寄生虫の雑学を教えてくれますが、完全に未知なものばかりで中々面白かったです。

そんな感じに、だいぶ普通の女子高生からは浮世離れした感じですが、見た目は普通のちょっとスレた女子高生(金髪でピアスでタバコを吸うという)で年相応の事で赤面したり恥ずかしがったりする佐薙ちゃんがとても魅力的でした。

変な子だなと思ったら、年相応で可愛らしい所もあって、でもやっぱりちょっと変わった子で・・・なんだか読んでてとても目が離せなくて、愛おしいと思える女の子です。

この作品で一番思ったのは「佐薙ちゃん。生きてくれ!」って事と「高坂。佐薙ちゃんを守ってくれ!」って事です。彼女の幸せを願わずにいられません。

総評

本当に素晴らしかったです。この人の作品はまだ1冊目ですが、すでにファンになりました。読んでない方には全力でおすすめしたいですね。

いやー、文章とそれが醸し出す雰囲気に魅せられるって感覚はやはり最高の気分ですね。例えば始めて村上春樹を読んだ時とかは最初から「ん?・・・」ってなって、50Pも読んだ頃には「これは・・・ヤバいわ。」って感じのその文章が持つ独特な何かに速攻で魅せされましたが、この人のは徐々に徐々に掠め取られていくかのような感じで、自然と最後までどんどん読んでたら気がついたら魅せられてるみたいな感じでした。

「物語そのものが面白い」ってのはやはり最重要だとは思ってますが、たまーに、こういう文章だけで強烈に魅せてくれる人がいるんですよね。こういうのがあるから物語を読むのはやめられないです。いやーほんと良かったです。この作品、作者さんに出会えて。

三秋縋先生のTwitterです。見てみればこの人が生み出す文章の面白さがけっこう分かるかと。

どうも読んで頂きありがとうございました。

それではまた。

三秋縋「恋する寄生虫」名言集です。 高坂賢吾 名言 「要するに僕は人間に向いていないのだ。」by高坂賢吾 ...
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