スターティング・オーヴァー 感想、レビュー 些細な事で人生は大きく変わる

三秋縋「スターティング・オーヴァー」感想、レビューです。ページ数:242P

物語の面白さ:A

文章:S

キャラの魅力:A

雰囲気、世界観、設定:S

総評:A

あらすじ

二周目の人生は、十歳のクリスマスから始まった。全てをやり直す機会を与えられた僕だったけど、いくら考えても、やり直したいことなんて、何一つなかった。

僕の望みは、「一周目の人生を、そっくりそのまま再現すること」だったんだ。

しかし、どんなに正確を期したつもりでも、物事は徐々にずれていく。幸せ過ぎた一周目のツケを払わされるかのように、僕は急速に落ちぶれていく。

―そして十八歳の春、僕は「代役」と出会う。変わり果てた二周目の僕の代わりに、一周目の僕を忠実に再現している「代役」と。

感想

もはや私の中で唯一無二の独自の趣がある作品を生み出してくれる作家さんとして、三秋縋先生のファンになってる私ですが、本作は先生の処女作に当たります。

評判では、「他の作品よりも退屈だった。」なんて意見も見られましたが、私は、変わらず、独自の不思議な設定、人間の負の部分に多く触れていて、陰鬱とまではいかずとも割と暗い雰囲気漂う作風。なんだけど、読後感は不思議な爽快感のようなものがあり、ちょっと救われたり、前向きになれるエンド

実際には、マイナス100だったのがマイナス99になった程度の救いなのかもしれませんが、それがとてつもなく尊くて意義あるものに思えるんですよね。

独自の雰囲気と、希望と絶望のバランス、そして村上春樹に似てる訳ではありませんが、それぐらいの独自の面白さがある文章、毎度毎度ほんとになんとも言えない魅力があります。

この人の場合はあとがきとかツイッターのつぶやき一つとっても、飛び出してくる言葉の一つ一つが本当に面白い、というか興味深いというべきでしょうか。
自分の頭からはとても生み出せない言葉だなと思うと同時に、私含め、おそらく多くのある程度心に負の部分を持ってる人は強く感じる所があるんですよ。

お得意の突拍子のない不思議な設定ですが、今回は20歳になったら何故か記憶を維持したまま10歳に戻っていた、というものです。

タイムスリップものは世の中に数多くありますが、そのほとんどは過去とか現在とか未来を変えよう。っていう感じだと思いますが、本作では「1週目がなんの不満もない最高の人生だったから何一つ後悔もないから、全く同じ人生を送りたい」っていう他ではそうそう見られないスタンスであるって事です。

しかし、前回をなぞって同じにしようとしていたのに、致命的な失敗をしてしまい、どんどんずれていき、自他共に認める社会的にダメダメな感じの若者になっていき、しかも、最初の人生で最高の人生を送っていた自分自身に瓜二つの「代役」までいて・・・っていう話です。

基本、主人公がどんどんどうしようもないなっていく様が描かれてるので、確かに退屈だと思う人もいるかもしれませんが、私の場合、そのどうしようもなさが全然自分と無関係でなかったりするので、主人公の思考や言動に共感出来たり、新しい発見があったりして全く飽きませんでした。

作品を通して言いたかったのは、「些細な違いで、人生が大きく変わることもある。」ってことだと思いますが、これはまさしく真実だと思いますね。

本作の中でも、「思い返すと、幸せのカケラはあちこちにあったけど、自ら粉々に踏み潰してきた。」というところがありますが、私も似たような感覚があります。

二十何年も生きてきて、全くと言っていいほどに女性と縁がない人生を送ってきていますが、これも思い返すとその縁を得るチャンスのようなものは何度も確かにあったのに、毎回自ら見て見ぬフリをしてそれらを尽くフイにしてきたという実感があります。

どこか一つでも、勇気を出せてたり、積極性があったならかなり違ったんだろうな。ってのはたまにほんと思います。

しかし、時間がかかる時もあるとはいえ、私達人間は気付く事が出来ますし、そして改善しようすることが出来る事はほんとに救いだと思います。

間違えて、気付いて、改善してってのは今後もかなり繰り返していくのでしょうが死ぬ間際には改善するところが0になってるか、間違えに気付かないままか、改善した後ですっきりして死にたいもんですね。

キャラ

物語に関わる主なキャラとしては主人公と、代役とその彼女、2週目の高校時代のボッチ仲間の女の子、妹の5人ですね。

主人公は出来過ぎな1週目の人生の記憶があるせいで、それとはかけ離れてしまった2週目の人生を受け入れる事が出来ずに、いろいろダメになってしまっている大学生です。

理想と現実のギャップに絶望するってのは多くの人が少しは味わった事があるでしょう。まあ前提としてありえないですが、「上手くやったら自分の人生はこんなに上手くいっていた」という具体的な記憶があり、しかも、それを目の前で別人やって見せている、なんてなったら絶望しない方が無理な話ですね。

それを考えると、主人公はダメな人なんかではなく、ごく普通の人間だと思います。

妹以外の3人については、主人公との関係性がどういうものなのかってとこだけで、あんま性格とかどういうキャラっていう描写もあんまないです。

妹は、2週目の兄に似たのか、内向的な文学少女なのですが、あんまし態度には出さないようにしてても、兄の事を気にかけてる様が可愛いらしかったですね。こんな妹欲しいです。

総評

他作品と比べると周りの評価はちょっと低いようですが、私にとっては全然面白かったですね。

三秋縋作品が好きな人や「俺の人生こんなはずじゃなかった。」みたいに思ってる人なんかには特におすすめしたいですね。

ただ、本作においては語り口が「~だった。」みたいに過去を思い出して話してるような特徴的な語り口ではありましたね。私はあんまり気になりませんでしたが、割と珍しい語り口なので違和感感じる人はいるかもしれません。

三秋縋「スターティング・オーヴァー」名言集です。 僕 名言 「なに一つ、自分の人生についての後悔を持っていない人間が...

スポンサーリンク







シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク